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一軒家の屋根リフォームってどんなことをするの?

2025.09.30 (Tue) 更新

マイホームを長く守るには、屋根のメンテナンスが欠かせません。

屋根リフォームには大きく分けて「塗装」「カバー工法」「葺き替え」の3つの方法があります。

今回は3つの方法について、それぞれの特徴や流れをご紹介いたします。

屋根リフォーム 3つの方法

1. 屋根塗装

目的:既存屋根の保護と美観維持

屋根塗装は、現在の屋根材をそのまま活かしながら、紫外線や雨風による劣化を防ぎ、外観を美しく保つための基本的なメンテナンスです。

屋根は外壁以上に直射日光や風雨の影響を受けるため、塗膜が傷むと雨漏りや屋根材の破損につながります。

定期的に塗装を行うことで、防水性を高め、屋根材そのものの寿命を延ばすことができます。

工事の流れ

  1. 現地調査・見積もり

    ドローンや目視で屋根全体を点検し、ひび割れ・サビ・苔の有無を確認。最適な塗料や補修内容を提案します。

  2. 足場設置・養生

    高所作業の安全確保のため足場を組み、塗料が外壁や隣家へ飛散しないようメッシュシートで養生します。

  3. 高圧洗浄

    長年の汚れ・カビ・苔を強力な水圧で洗い落とし、塗料がしっかり密着する下地を作ります。

  4. 下地補修・下塗り

    ひびや釘浮きを補修し、サビ止めや防水下塗りを施します。下塗りは上塗り塗料との密着を高める重要な工程です。

  5. 中塗り・上塗り

    指定された塗料を2回塗り重ね、色ムラを防ぎながら耐久性・美観を確保します。

目安工期と費用

標準的な30坪前後の一軒家では、天候にもよりますが約1〜2週間が目安です。

費用は使用する塗料や屋根形状によって変わりますが、50万〜100万円程度が一般的な相場です。

ポイントと注意点

・屋根材が健全で下地に大きな損傷がない場合に最適。

・定期的な塗り替え(約10〜15年ごと)が、葺き替えなど大規模工事のリスクを減らします。

・遮熱塗料やフッ素塗料など、耐候性・断熱性を高める塗料を選ぶと、夏の室温上昇を抑える効果も期待できます。

2. カバー工法(重ね葺き)

目的:既存屋根を活かしながら耐久性・断熱性を高める

カバー工法は、既存の屋根材を撤去せず、その上に軽量の金属屋根を新しくかぶせるリフォーム方法です。

既存屋根を解体しないため、廃材がほとんど出ず、工期の短縮とコスト削減が可能。

さらに、新しい屋根材と既存屋根の二重構造になることで、遮音性・断熱性も向上し、夏の暑さや冬の冷え込み対策としても効果が期待できます。

特徴とメリット

・既存屋根を剥がさないため廃材処分費を大幅にカット

・工期が短く、居住したままでも施工が可能

・断熱・防音効果が高まり、冷暖房効率アップ

・さびにくく軽量な金属屋根を使用するため、耐震性も安心

一方で、下地や野地板が大きく傷んでいる場合は、カバー工法では対応できず、葺き替えが必要になることがあります。

工事の流れ

  1. 点検・下地確認

    既存屋根や下地の劣化状況を調査。雨漏りや腐食がないかをしっかり確認します。

  2. 既存屋根の洗浄・補修

    高圧洗浄で苔や汚れを除去し、必要に応じて割れや釘浮きなどを補修。

  3. 防水シート(ルーフィング)施工

    既存屋根の上に防水シートを敷設し、雨水の侵入を二重に防ぎます。

  4. 新しい屋根材の取り付け

    軽量で耐久性の高いガルバリウム鋼板などを設置。仕上げに棟板金を取り付けて完成です。

目安工期と費用

30坪前後の一軒家で約2〜3週間が目安。

費用は屋根形状や使用する金属屋根によって異なりますが、おおよそ80万〜150万円程度が一般的な相場です。

ポイントと注意点

・既存屋根がアスベスト含有スレートでも、撤去せず施工できるため安全面でもメリット大。

・ただし下地が著しく傷んでいる場合は葺き替えが必要。

・断熱材付き金属屋根を選ぶと、夏の室温上昇を抑える効果がさらに高まります。

3. 葺き替え

目的:屋根を下地から全面リニューアルし、長期的な安心を確保

葺き替え工事は、既存の屋根材をすべて撤去し、下地(野地板など)から新しい屋根材に交換するリフォーム方法です。

屋根を骨組みまで一新できるため、雨漏りや下地の腐食、構造的な劣化への根本的な対策が可能。

「屋根の寿命が来ている」「雨漏りが頻発している」「屋根材を別の種類に変えたい」といったケースで選ばれる最も確実な方法です。

特徴とメリット

・既存の傷んだ下地を補修・交換でき、建物全体の耐久性を大幅に向上

・瓦から軽量金属屋根への変更など屋根材を自由に選択でき、耐震性アップも期待

・断熱材を追加することで、冷暖房効率の改善や光熱費削減にもつながる

・将来的に再塗装や部分補修が少なく済むため、長期的なメンテナンスコストを抑えやすい

工事の流れ

  1. 既存屋根の撤去

    古い瓦やスレート、下葺き材をすべて取り外し、野地板の状態を確認します。

  2. 下地(野地板など)補修・交換

    劣化や腐食が見られる箇所を補修し、必要に応じて新しい野地板を施工。

  3. 防水シート施工

    雨水侵入を防ぐ高耐久のルーフィングを敷設し、二重の防水層を確保します。

  4. 新しい屋根材を葺く

    瓦・金属・ガルバリウム鋼板など、希望に沿った屋根材を丁寧に設置します。

目安工期と費用

標準的な30坪前後の一軒家で約2〜4週間

費用は屋根材や下地の補修範囲によって変動しますが、150万〜250万円程度が一般的な相場です。

ポイントと注意点

・既存屋根をすべて撤去するため工期・費用は他工法より大きくなる

・しかし建物寿命を大幅に延ばせるため、長期的には費用対効果が高い

・地震に備えたい場合や雨漏りを完全に解消したい場合に特におすすめ

どの屋根工事を選ぶ?判断のポイント

1. まずは「屋根の現状」を把握

屋根工事を検討する際に最初に重要なのは、現在の屋根の状態を正確に知ることです。

築年数や屋根材の種類、地域の気候によって劣化の進み具合は大きく異なるため、目安だけでなく実際の症状をしっかり確認することが必要です。

築年数の目安と屋根材ごとの寿命

10〜15年

スレート屋根や金属屋根はこの頃から塗装の劣化が目立ち始めます。

小さな色あせや軽度のコケなら、塗装による保護で十分対応可能。

15〜25年

塗膜の防水性能が弱まり、屋根材そのものが傷みやすくなる時期。

野地板(下地)に湿気が回っていないか、雨漏りの形跡がないかを点検し、カバー工法か葺き替えを検討するタイミングです。

25年以上

瓦の割れ、下地の腐食など構造的な劣化が進んでいる可能性が高く、葺き替えによる全面リニューアルが有力候補となります。

とくに築30年以上の場合は、屋根材がアスベストを含んでいるケースもあり、専門的な処理が必要です。

症状別チェックポイント

塗膜の色あせ・チョーキング(手に白い粉)・軽いコケや藻

→ 塗装だけで耐久性を回復できる場合が多く、早めの再塗装が効果的。

繰り返す雨漏り・天井のシミ・屋根のたわみ

→ 下地まで腐食している可能性があり、葺き替え工事での根本的な補修が安心。

屋根材のひび割れ・反り・釘の浮きが部分的

→ 下地が健全ならカバー工法で対応可能。二重構造で断熱性も高まります。

点検のポイント

外から見て分かりにくい不具合も多いため、5〜10年に一度は専門業者による無料点検を受けるのがおすすめです。

ドローン調査やサーモカメラを使えば、高所に登らず安全に確認できます。

このように築年数だけでなく、屋根材の種類・地域の気候・実際の症状を多角的にチェックすることで、

「塗装」「カバー工法」「葺き替え」のいずれが最適かを判断しやすくなります。

2. 予算と将来計画で選ぶ

屋根工事を選ぶ際は、初期費用だけでなく「今後どのくらい住み続けるか」「将来的なメンテナンスコスト」を総合的に考えることが大切です。以下は目安となる費用帯と、それぞれに向いているケースを詳しくまとめました。

■ 塗装工事

費用の目安:50万〜100万円前後(30坪程度の住宅)

耐久年数:塗料の種類によって8〜15年程度

特徴・向いている人

・今後10年以内に建て替えや売却を考えている場合

・屋根材自体に大きな傷みがなく、表面の防水性能だけを回復したい場合

・施工期間が短く(約1〜2週間)、足場代を含めても比較的低コストで済ませたい方

■ カバー工法(重ね葺き)

費用の目安:80万〜150万円前後

耐久年数:20〜30年程度

特徴・向いている人

・既存屋根を撤去しないため廃材処分費が少なく、工期も比較的短い(約2〜3週間)

・遮音・断熱性が向上し、光熱費の節約効果も期待したい場合

・住みながら工事を進めたい方や、今後20年以上は住み続ける予定がある方

・既存屋根の下地が大きく傷んでいないことが条件

■ 葺き替え工事

費用の目安:150万〜250万円前後

耐久年数:30年以上

特徴・向いている人

・下地まで傷んでいる、または雨漏りが繰り返されている場合

・住まい全体の寿命を延ばしたい、将来的に世代を超えて住み続けたい方

・屋根材を瓦から軽量な金属屋根に替えるなど、家の構造を根本的に改善したい場合

・施工期間は2〜4週間と長めだが、建物の資産価値を大きく維持できる

■ 予算と将来計画の考え方

短期的な出費を抑えたい場合:塗装が最有力。ただし10年ごとに再塗装が必要。

費用と耐久性のバランスを重視:カバー工法。初期費用は塗装より高いが、長期的に見ればメンテナンス回数が減り、結果的にコストを抑えられる場合も。

長期的な安心・資産価値を優先:葺き替え。初期費用はもっとも高額だが、家全体の耐久性を根本から改善できる。

ポイント

・予算に加え、「あと何年この家に住むか」「将来リフォーム予定はあるか」「売却や賃貸予定があるか」を事前に整理しておくと、後悔のない選択ができます。

・不安な場合は、複数の施工会社から見積もりを取り、工事内容と保証期間を比較することが重要です。

3. 住まいの条件も重要

屋根工事を成功させるには、家の形状や立地、気候などの「住まい特有の条件」を考慮することが不可欠です。条件に合わない工法を選ぶと、追加費用や早期劣化につながることもあります。以下のポイントを確認しましょう。

■ 屋根の形状・勾配

影響ポイント

・屋根が急勾配(傾斜30度以上)だと足場や安全対策が増え、作業効率が下がるため工期が長くなり、費用も上がる傾向があります。

・谷が多い、入母屋(いりもや)屋根、複雑な寄棟(よせむね)屋根などは、板金加工や雨仕舞い(あまじまい)処理が増え、材料費と施工手間がかさみます。

選び方の目安

・シンプルな切妻(きりづま)や片流れ屋根は、塗装・カバー工法・葺き替えいずれも施工しやすく費用を抑えやすいです。

・複雑な形状は、雨漏り防止のため下地補修を伴う葺き替えを選んだほうが安心な場合があります。

■ 地域の気候・自然条件

積雪地域

・雪の重みに耐えるため、下地補強や耐荷重の高い屋根材(ガルバリウム鋼板など軽量金属)を選ぶことが重要。

・雪止め金具の設置も必須で、その分コストや工期が増えます。

沿岸部(海沿い)

・塩害によるサビ対策が必要。塩害に強い塗料や金属屋根材(フッ素塗装鋼板など)を検討。

台風・豪雨が多い地域

・強風で屋根材が飛ばされるリスクがあるため、下地強化や防水シートの高耐久仕様を選ぶのが安心。

■ 断熱・遮音性能

断熱

・夏の暑さや冬の寒さが気になる場合は、遮熱塗料や断熱材付き金属屋根を選ぶと冷暖房費の節約につながります。

・屋根裏断熱材の追加施工や、通気層を確保するカバー工法も有効。

遮音

・金属屋根は雨音が響きやすいため、下地補強や防音シートを併用することで快適性を高められます。

■ 周辺環境と将来計画

・近隣住宅が密集している地域では、足場の設置や資材搬入のスペース確保も費用・工期に影響します。

・将来的に太陽光パネル設置を考えている場合は、対応可能な屋根材・下地補強を事前に相談すると安心です。

まとめ|屋根工事を成功させるために

屋根工事には大きく3つの方法があります。

それぞれの特徴を理解し、自宅の状態とライフプランに合った方法を選ぶことが大切です。

塗装:屋根材が健全で、コストを抑えて耐久性を延ばしたい方におすすめ。

カバー工法(重ね葺き):既存屋根を撤去せず、断熱・遮音性を高めながら工期短縮も可能。費用と耐久性のバランスを重視する方に。

葺き替え:屋根を一新し、下地から構造補強まで対応できるため、長期的な安心を求める方に最適。

初めての工事で気をつけたいこと

信頼できる業者選び

・訪問営業での即決は避け、複数社から見積もりを取得。

・建設業許可や屋根施工管理士などの資格・施工実績を確認しましょう。

詳細な見積もりをチェック

・足場代、廃材処分費、保証内容などが明記されているか要確認。

・極端に安い見積もりは手抜き工事のリスクがあるため注意。

メンテナンス計画を立てる

・塗装は10〜15年ごとの再塗装が目安。

・カバー工法・葺き替えは20年以上持つ場合も、定期点検は欠かせません。

まずは「現状把握」と「複数見積もり」から

「とりあえず塗装で…」と安易に決めてしまうと、数年後に大規模修理が必要になるケースもあります。

まずは専門店による無料点検や診断を受け、屋根の状態・予算・将来計画を総合的に見極めてください。

屋根は住まいを守る大切な要です。

現状に合った工法を選び、長く安心できる住まいづくりを実現しましょう。